税務調査について

監事の税理士の森本進です。今回は、税務署が実施する税務調査について書かせて頂きます。

前回のブログでも書かせて頂きましたが、日本の税制は、第二次世界大戦の敗戦により、シャウプ勧告に基づく申告納税制度になりました。申告納税制度は、納税者本人が自分で税金を計算し、確定申告書を税務署に提出することで、納税者自身で納税の義務を確定させることで出来るという制度です。民主国家の財産を国民自らが支えるという民主的納税思想に基づく優れた制度なのですが、その仕組みであるが故に、税額計算の誤りや、場合によっては意図的な嘘の申告をする人も出てきます。その不正行為の抑止、及び申告書の記載内容の確認を目的に税務調査は行われます。

税務署の調査官には、納税者の税金計算に関する資料を確認したり、質問したりする権限が与えられています。この権限を「質問検査権」と言います。一般的な税務調査は「任意調査」という税務調査になります。 「任意」という言葉であることから、税務調査を拒否できるのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、残念ながら拒否することは出来ません。これは、調査官の質問及び検査に、正当な理由がなく応じない場合には、罰則が科されるためです(1年以下の懲役、または20万以内の罰金)。

現在の税務調査の実施状況ですが、法人税で約3.2%、所得税で約1.1%、相続税で約9.1%となっています。この税務調査の実施率ですが、年々下がる傾向が続いています。これは、年々増加する申告件数に税務署職員のマンパワーが追い付いてないこと、経済の国際化により税務が複雑化していること等が理由となっています。実施率は下がっていますが、実施件数自体は減ってはいません。また、統計データによると、税務調査対象先の約80%で何らかの誤りが見つかり、約20%で故意に税金を少なくする不正計算があったとして重加算税が課されています。

これは、税務署も適当に調査対象を選定しているのではなく、追徴税額が見込める納税者を選んで調査選定を行っているからです。具体的には、KSK(国税総合管理)システムというシステムにより、申告書の内容を分析し、調査必要度をスコア化して選定に活用しています。また、税務署には、様々な形態で収集し、蓄積した資料があります。これには、他の税務調査先で収集した資料、銀行で入手した資料、法律によって税務署への提出が義務付けられている資料、投書等の資料があります。これらの資料から、不正計算が疑われる納税者が選定され、税務調査が実施されます。

税務調査で故意に税金を少なく申告していたことが発覚すると、

ペナルティとして35%の重加算税が課せられます。また、延滞税

もかかります。多額の支払いが発生し、大部分の方が後悔することになります。普段から適切な処理を心掛け、正しく申告をすることが求められます。

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