オンリーワンのNGO

どの世界にもアドバイザーというのがいます。その道の専門家で、いろいろ教えてくれるのですが、経験とマニュアルにそって同じ色に塗りたがるので、ときに教わる側が本来持っていた個性を消してしまうことがあります。

NGOとは個性集団の代表的なものだと思いますが、多くは清貧に甘んじています。だから組織を長期にわたり維持しようと思うと、NGOでも経営基盤が気になってきます。他人の芝生がうらやましくなります。とりわけ資金がふんだんだったり、若い会員が多かったり、デジタル化が進んでいたりするとそのうらやましさは倍増します。井の中の蛙が外の賑わいに目が覚めて、自分も井戸から出てみたいと思うのと同じです。“井の中の蛙、されど天の深きを知る”という、外野に動じない良さもあるのですが。

ベンチマーキングは企業活動では大切ですが、NGOがよそ様のやり方を真似したっていいことは一つもありません。せっかく培ってきた良い遺伝子をどぶに捨てるだけです。高邁な設立理念を薄めてしまいます。

IV-JAPANは35年の歴史を持つNGOですが、会員は手弁当ではせ参じる善意の人が中心です。自らの組織のあるべき姿を熱く議論することもありませんでした。広く浅く、システマティックに寄付金を集めるのも苦手です。クラウドファンディグなどで上手に集金する若いNGOの豊かさを指をくわえてみています。「できれば私たちも」と思うのは当然ですが、デジタル人間の少ない組織がそのインフラを作るのは容易なことではありません。

そこでアドバイザーの登場と言うことになるのですが、どこかの成功例を箱ごと持ち込まれたのでは、IVの体力、知力では耐えられません。水田に野菜を植えるようなもので、立ち腐れは目に見えています。自分の田んぼのことは、アドバイザーにあれこれ言われなくても、自分が一番よく知っています。解決策は自分で考えなくてはいけません。そうでなければIV35年の歴史はあらぬ方向に変曲点を迎え、どこにもある無個性のNGOに成り下がってしまいます。

組織の維持はNGOの目的ではありません。手段です。所期の目的を果たせば解散も選択肢の一つです。でもIVにはまだやるべきことたくさんあると思います。だからこそ組織の維持にいまこそ真剣に取り組むことが不可避になっています。IVがオンリーワンのNGOとしてアジアの人たちに頼りにされる、その理念を達成するためには自分たちも少しは豊かになっていたほうがいい、その程度の経営基盤の強化を考えたいと思います。

アジアの人が独り立ちをして、IVを必要としなくなるときがIVのゴールだと思いますが、それはIVの発展的解消を意味します。解散に向けて組織を充実するとはいかにも皮肉なことですが、それがNGO本来の姿だと思います。

理事 池田 敏秀