伝えることの大切さ
先月、芝浦工業大学から依頼があり、大宮キャンパスにてIV-JAPANの活動概要と私自身の海外経験(主に青年海外協力隊時代の話)について話をしてきた。本来私は人前で話すようなことは苦手であるが、事前に何を話そうかといろいろと考えているうちに、若い学生さんたちに伝えたいことが次から次へと湧き出てきて、30分では話しきれないような構想ができあがってきた。なので当日は無駄な話は出来る限りしないようにして、要点だけを話していったが、それでも時間は足りず、かなり早口で詰め込んだ形になり、言いたいことが上手く伝わったかどうか不安であった。
さて、肝心の学生さんたちの反応はというと、2回の講義合わせて100人以上はいたものの、みなさん静かで控え目であって、私の話に対する反応は若干薄いように感じた。。。が、いやしかし、実際はそうではなかった!後日先生から届いた学生さんたちの感想を読んでみると、私の伝えたかった真意が結構伝わっていたことがわかった。中にはかなり熱いコメントを書いてくれた学生も結構いて、私はとても嬉しかった。私が一番伝えたかったのは「考えることと実践すること」の大切さであったが、いろいろと心に響いて考えてくれた学生さんも多かったようだ。今の学生さんたちは安易な反応をしない反面、とても思慮深いのかもしれないと思った。
ところで、「貧困」と一言には言うけれども、では「貧困」というものは何なのか?日本に貧困はないのか?物に満たされた日本にも心の飢えと渇き、すなわち「心の貧困」というものがあるのではないか。マザーテレサも言ったように、食べ物の飢えは食べ物を与えれば解決するが、心の飢えは深刻なのである。そう、物事は奥深く考えなければならない。目に映る印象だけで判断するのは危険なことだ。しかし深く考えるには、やはり自らの知識と経験があるていど必要となる。学生さんたちはまだ若い、そして若いからこその柔軟な感性をもっている。その感性があるうちに海外へ飛び出すなどの大きな経験をしてほしいと思う。もちろん海外にでればいいというものではないが、とにかく自分がいい意味でショックを受けるような経験をたくさん積んでほしい。そして物事を自分でよく調べて、よく考えてほしい。そして実践することは最も大切であるが、自分が何か大きな衝撃を受け、たましいで何かを感じた時には、人は何かを自ら実践せずにはいられなくなるはずだと私は思っている。
もちろん人それぞれ能力も環境も違うのだからできることはそれぞれ違う。だから自分のできることをすればよい。ただし、「最善を尽くす」ことが大切だ、と学生たちにも強調した。「自分のできることをすればよい」と、ていのいい逃げ口上にしてはいけない。偉大なことを成すのではなく、小さなことでも偉大な愛をもってすることが大切なのだ。
「Love is doing small things with great love. Mother Teresa」
今まで伝えることを諦める自分もいたが、今回伝わったという手ごたえを初めて感じた。そして口下手な私でも伝えることができると自信にもなった。これからも機会があれば自分の経験を伝えていきたい。特に若者たちの価値観と感性をいい意味で揺さぶって、何かが飛び出してくることを期待したい。今回の講演は私にとっても貴重な経験、大きな収穫となった。機会をくださった中口先生、真剣に聞いてくれた学生さんたち、ありがとうございました。
日本事務局 松本尚
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