ラオスの炭が日本で使われている

代表理事 冨永幸子

 ラオス産の木炭(もくたん)、「すみ」についてのお話しです。日本の焼き鳥屋さんや、うなぎ屋さんで、ラオスの炭が使われているのは、ご存じですか?

 以前は、日本の飲食店で使われる炭は、中国産の輸入炭が多くを占めていました。それが、2005年に、中国国内の森林環境保全を目的に、中国政府から木炭の輸出禁止措置が講じられたことで、徐々に日本へ輸出される中国産の炭の量が減ってきています。日本では、2011年には年間19,000トンを超える中国産の炭が輸入されていたのですが、2021年には、3,000トンにまで減りました。10年間でおよそ6分の1にまで減りました。それを埋める形で、ラオス産の木炭の輸入量が年々増加していて、今では業務用として、日本の飲食店で使われている外国産の木炭の8割から9割がラオス産です。
 ラオス産の木炭もコロナ禍のあおりを受けました。ラオス産の木炭の輸入量は年々順調に増加して、2019年には、年間の輸入量が1万トンを超えていたのですが、2020年と2021年はコロナ過で輸入量が減って、2021年には7,600トンにまで減少しました。

 現在、日本の飲食店の休業要請は解除されましたが、ラオス産木炭の需要先である焼き鳥店や炉端居酒屋(ろばたいざかや)などが、再び以前のように木炭を使って復活するのかどうか、関係者は注目しています。ラオスから輸入されている木炭は、「白い炭」と書く「白炭(はくたん)」と呼ばれる炭です。炭にする木は、ラオス語で「マイティウ」と呼ばれる おとぎり草科の木で、日本にはない木です。東南アジアに広く分布していて、地元でも、炭にする木として使われています。油分(あぶらぶん)が多くて、そこそこ火力が強く、ビール瓶くらいの太さの木を伐採して、放っておいても、根元から再び生えて5~6年で成長するので、森林破壊にはなりません。ちなみに、ラオス政府により2015年から天然の木を利用した木炭の輸出は禁止されていますが、計画的に伐採しているマイティウは、その対象ではありません。また、多くの業者は天然の木を計画的に伐採する以外に、マイティウの植林も行っています。ラオスは6月1日が「全国植林の日」ですので、コロナ禍以前には、日本から植林ボランティアがラオスに来て、およそ1ヘクタールの土地に2000本のマイチィウを植林していました。環境保全をしながら、木炭づくりが行われています。

ラオスの炭焼きの現場に行ってみました。ラオスの炭焼きでは、まず農家が原木を炭焼き業者に持ち込みます。次に入口が狭い窯に原木を入れて、火を入れて1週間ぐらい空気を調整しながらじわじわと燃やして水分や煙となる成分を飛ばします。「焼く」のではなく、蒸気で蒸す感覚だそうです。そして、煙突の煙の色を見て、炭化が始まったのを確認して、空気の入り口をふさぎます。このまま空気を遮断してできるのが「黒炭」(くろいすみ、と書いてこくたん)です。日本でもよくバーベキューなどで使われていますし、昭和30年代までは、日本の各家庭でも七輪で使われていたこともありました。

 

 一方、白炭は火を消すやり方が、黒炭とは違います。季節によっても異なりますが、4日~6日で煙の色が白色になると、一気に窯の入り口を開けて、窯の中に空気を入れます。すると、木が一気に燃え上がって、およそ1,200度になって真っ赤な色になります。そして、真っ赤になっている木を外に掻き出して、強制的に火を消すために、土と灰を混ぜて水を含ませた「消し粉」をかけて1日ほど冷まします。こうしてできた炭の周りに、灰がついて白くなり、白炭ができます。冷めたら、炭の大小や形の選別をします。ここまでが、炭焼き業者の仕事です。

 次は、選別工場に運ばれます。日本には購入業者によっていくつかの規格があって、なかでも高級品とされる炭は、断面が丸くて直径が2~8cmくらいのものです。断面が割れているもの、さらに、短かったり、欠けたりした炭は、品質が下がるそうです。焼き鳥やウナギの焼き方にはお店の職人さんのこだわりがあるので、選別はとても大事な作業です。

なぜ、飲食店では、白炭(はくたん)が、好まれるのは、炭自体が固くて、着火しにくいけど、品質が均一で、安定した火力を長時間にわたって得られるからだそうです。日本の高級料亭では、国内産の業務用木炭、特に和歌山県産の「紀州備長炭」の銘柄が、最高級品として現在も使われていますが、紀州産の木炭の値段は15キロで、ラオス産の木炭の2倍以上の1万円~1万5千円になります。また、それよりもさらに高価なのが、茶の湯で使われる「菊炭」です。切り口が菊の花のように見えるので「菊炭」と呼ばれますが、菊炭は、先ほどお話ししたバーベキューなどでも使われる種類の「黒炭」の一つです。主にクヌギの木が使われていて、かつては、大阪北部の池田市で作られたものが有名で、現在は千葉県の上総炭が流通しています。お値段は、5キロで6,000円~1万円くらいです。それに対して、良品として選別されたラオス産の木炭は、1箱15キロ入りで4,000円~6,000円で販売されるので、質・価格ともに日本の飲食店に好まれるのだと思います。

 ラオスでは、今でも都市部の家庭の半分、地方ではおよそ8割が、熱源として日常的に木炭を利用しています。コロナ過でプロパンガスが高くなり、庶民の間では、七輪で炭火の料理をする機会が、ますます増えたそうです。15キロでおよそ350円、いいものでも800円くらいと、比較的手ごろな値段で手に入れることができます。それに、ラオスの人は、炭火の料理の方がおいしいと言います。私のラオスの家でも、ガスと炭と両方使っています。