ラオスの技能実習生

 代表理事の冨永幸子です。

 一カ月前に日本に一時帰国しました。ビエンチャンからの同じ便に、同じ制服を着た15人のラオス人青年たちが一緒でした。ビエンチャンからハノイの便では夕食が出なかったので、ハノイで乗り換え便を待つ間、サンドイッチでも買おうと思いました。実は私は3年前、ラオスの山中で交通事故に会い、足が少々不自由になり、車いすを利用していました。そこで彼らに声をかけて1軒しか見当たらない空港内の売店へ連れて行ってもらいました。とても親切で車いすを押してもらいました。

 彼らに何が食べたいかと聞いたら、カップケーキを指さします。ラオスではぜいたく品です。サンドイッチよりケーキが食べたかったのでしょう。空港なので、カップケーキ1個が500円近くしますが、皆におごることにしました。ラオスの最低賃金は2018年に改訂されても月110万キップおよそ10,624円(0.0097円/Kip)ですが、コロナ過で物価も高くなり、生活は大変です。政府の外貨不足で現地通貨の価値が下がって、輸入品に頼っている日用品などが実際には値上がりしてます。

 彼らに何の仕事で日本に来たのか尋ねましたら、どうやら技能研修生で、農業が主な仕事ということが分かりました。日本語はラオスで4カ月間習ったということで、ひらがな、カタカナは読めるけど、話すのはいまいちでした。農業をすることに抵抗はないのかと聞いたら、実家が農家で毎日働いていたから、大丈夫と言います。皆、日本で働いて、親や家族に仕送りしたいと、目を輝かせていました。

 私が成田空港に到着した4月は、今年になって入国制限が緩和されたので、ラオスからは3番目の技能実習生グループだそうです。中にはコロナ過で派遣が決まってから2年も待たされたラオス人もいました。空港には受け入れ先の技能実習実施会社のラオス人職員が出迎えに来ていて、これから1か月間は日本語研修を行い、その後は各地で農業に就くとのことでした。別れる時にみんなとSNSで友達になりました。

 当会はラオスで木工家具、縫製、理容美容、調理やホスピタリティ・介護職業訓練を実施しています。10年前より、技能実習生の日本の受け入れ機関の方が中国人に代わり300人ほどラオス人の縫製実習生が欲しいとか、介護実習生が欲しいと病院や介護施設の方がよく訪ねて見えます。最近は特殊技能受け入れの会社の方もいらっしゃいました。技能実習生制度は問題が多くネガティブな印象を持っていたので、当会の卒業生を紹介することはありませんでした。

 しかし、今回の研修生に接して、いろいろと聞いていくうちにだいぶ制度が改善されたようで、このグループの管理団体や技能実習実施者(つまり、外国人を雇用する日本の企業)はいいようです。

 技能実習制度は1993年に「発展途上国への技術移転に国際貢献する」ことを目的に制度が発足しましたが、日本の労働力不足を補うための安価な労働力として、研修とは程遠い印象があり、実習生の失踪など問題も多発しました。2009年には入管法が改正され、あいまいだった在留資格に「技能実習」が制度化されました。2017年にはさらに「技能実習法」と「実施要領」が施行され、また同時に、技能実習制度の適正な実施を監督する法務省と厚生省が所管する認可法人の「外国人技能実習機構」も組織されました。2021年末には技能実習生数は276,123人に上ります。今年に入ってコロナ禍の入国制限が緩和されたこともあり、ますます増加傾向にあります。2019年には「特定技能」という在留資格が改正入管法にあらたに加わりました。が、日本語検定はラオスでも実施されていますが、他の試験体制が整ってないことなどで、あまり活用されていません。

 ラオスの送り出し機関にもよりますが、技能実習生は2600ドル~2900ドル(33万円~37万円)を手数料として払ったとのことです。この内訳はラオスでの3~4か月間の日本語教育費、パスポート取得料、日本への航空運賃などです。こんな大金をどうやって払えたのか聞いてみましたら、大半が親戚等からかき集めて払ったとのことです。でも研修を始めたら月13万円~15万円が支給されるので、大丈夫と言ってました。むしろラオスでは仕事がないので、とてもうれしいと。

 当会の職員も退職して、日本で3年間養鶏農家にいた技能実習生がいます。帰国してからは養鶏業を始め、現在は日本の果樹を育てる試験農業にも取り組んでいます。来週から研修現場に赴く青年たちが、技能を習得してラオスで活躍できるようになり、幸せになってほしいと願わずにはいられません。