ラオスのお土産に香水はいかが!?

 代表理事の冨永です。

 ラオス産のラム酒に続き、また一つラオス産のお土産が増えました。ラオスの香水です。

 皆様、正倉院の香木「蘭奢待」=らんじゃたい=という名前をお聞きになったことがあると思います。NHKの大河ドラマ「キリンが来る」でも、織田信長が切り取った場面が出てきます。一説ではラオスとベトナム国境にある安南山脈辺りから産出されたものとも、ボルネオ産とも言われています。これは樹脂(木のヤニ)成分が長い間土に埋もれて熟成したものですが、今でもラオスには良い香りのとれる樹脂を出す木があることは世界に知られています。つまり、ジンチョウゲ科の木ですが、東南アジアに広く分布しています。

 匂いのいいものは雨の多い高原地帯に生え、この一部に「黴」=び=という黒いカビの影響で、樹液が固まり、樹脂となって、腐ることはなく、燃やすとよい香りがして、水に入れると沈むことから「沈香」=じんこう=と呼ばれています。沈香の高級品で伽羅(きゃら)と呼ばれるものは、油性分が50%以上含まれているものをいうそうです。沈香はワシントン条約で希少品目第2種に指定されていて、ラオスでは輸出禁止になっています。この沈香が取れるagawood (アガウッド)に目を付けたのが、インドの商人で、アッサムで先祖伝来の香料を生産していましたスッカビー・チョウズリーさんです。家族ぐるみでラオスに移住して、まず、アガウッド(沈丁花科の木)を探してようやくサイソンブンで良木を見つけます。サイソンブンは反政府軍が出てきて、銃撃戦などもあるところで、危険地域になっています。

 今では各地に合計1万ヘクタールの土地にアガウッドを(1ヘクタールに約800本)植え、根気よく育てました。20年以上前のことです。社長のチョウズリーさんに、この香木から香水をどうやって作るのか、お伺いしました。まず15年くらい育った香木の樹皮にドリルで何カ所も穴をあけてヤニを出させて数年おき、その木を伐採して細かくチップにします。それを大鍋に入れてぐずぐずと煮て、湯気を集めます。その中から油性分を取り出します。数トンのチップから数百グラムしか取れないそうです。

 この点に関しては香りの専門家である谷田貝光克(やたがい・みつよし)東京大学名誉教授の著書「ひとのくらしと香りを訪ねて 香り世界飛び歩記 2」の中に詳しく紹介されております。ある木の専門家は「香料で事業を成功させるには木の育成に長い時間がかかり、よほど資本がないとできない事業です。時に全部失敗に終わる可能性もあり、博打のようなものです。」と、コメントしていました。

 1997年に工場を建て、アガウッドの油性分の生産を開始して、もっぱら中東のドバイの世界市場に持っていきました。チョウズリーさんのお名前からイスラム教徒ということが分かりますが、イスラム教ではお祈りの際にお香が欠かせません。ドバイは香料の世界一大集結地だそうです。チョウズリーさんはラオスで香水生産をして、ラオス産のお土産ができたらいいと考え、2014年に当時のラオス首相をドバイにお連れして、いかにラオス産の香料が世界に引けを取らず、人気が高いことを理解してもらいました。ラオスでの生産許可を取り、2021年よりラオスで販売を始めました。

 ラオスはあまり産業がなく、お土産と言えば伝統的な絹織物が知られていますが、最近は日本人の開発でラオス産のラム酒が有名ですが、昨年から香水が加わったわけです。ところが香水の名前はラオ語が付けられていて、旅行者には意味が分かりません。私が気に入ったのはほのかな香りの「ドク・チャンパー」です。ドク・チャンパーはラオ語で国花のチャンパーの花(プルメリア)のことです。全部で4種類ありまして、「ソックディ」=Good Luck の意味=と名付けられたのもあり、チョウズリーさんはラオス人に香水を広めたいとラオ語名を付け、もちろん国賓のお土産にも使ってもらいたいとおっしゃっていました。

 現在はラオス国籍も取り、ラオ語も読み書きに不自由なく習得し、自分の息子たちも同様です。事業も香水に限らず、沈丁花の葉のお茶も生産し、タクシー会社も近い将来始まるそうで、インド商人のしたたかさを見せ付けられました。