ラオスのラム酒

 代表理事の冨永幸子です。

 ラオスでは8月3日まで6度目のロックダウンが発出され、さらに新しい動きでは6月26日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、外国人を含むラオスで生活する全ての人に対し、行動追跡等の機能を有するアプリ「Lao KYC(ラオ・スースー)」の使用経路の求める通知を発出しました。

1 スマホを持っている人は、LaoKYCアプリをインストールし、「ラオ・スースー」サービスにアクセスすること。人の出入りがある全ての施設は、スマホで入場を記録できるように、スキャン用QRコードを設置すること。スマホを持っていない人は、入場時に電話番号を告げ、施設運営者に代理で登録してもらうこと。行動履歴は、安全と秘密を守るためラオス国内のデータセンターに30日間保管する。

2 公共施設、レストラン、商店等、利用者が入場する全ての施設は、ウェブサイトLaoKYCで各自のQRコードを作成し、施設利用者が入場を記録できるようにすること。などなど、、、

 現在7月22日のコロナ陽性患者は累計で4,119名、近隣諸国へ出稼ぎに行っていた帰国労働者が入国時の検査で陽性と出たケースが多いのです。今後、先月導入された行動追跡アプリによって、市中感染の追跡調査の確認が容易になるでしょう。日本だったら、個人情報との関連で難しいのかと思います。

 今回はラオスのお酒についてご紹介します

 皆様もご存じなのがラオスのビールですが、どんな田舎へ行っても「ビアラオ」は売っていて、生ぬるいビールに氷を入れて飲んでいます。

 ラオスには昔からどこの村でも作られていた醸造酒「ラオハイ」があります。これは蒸したもち米にスア・ラオという餅麹を入れ、籾殻を25%加え、ざるに入れて2~4日寝かせて発酵させます。(1次発酵→もろみ) 次にもろみを壷に入れて4~5日置き、2次発酵させます。飲み頃は30日くらいたったものがおいしいそうです。飲み方は壷に竹で作ったストローを入れ、飲んだ分だけ水を足していきます。お客さんが来ると村では歓迎の意味でラオハイが出されますが、私も興味津々で飲んでみました。アルコール度数は高くても12度で低く、薄い甘酒のような感じでしたが、2~3本の竹ストローを壷に入れてみんなが一緒に飲むので、ちょっと不潔かな~と、感じました。

 「ラオラオ」と呼ばれるアルコール40度~45度の強い蒸留酒があります。これも伝統的なお酒ですが、もち米にもろみを入れて発酵させた、いわゆる焼酎で、沖縄の泡盛のルーツとも言われています。

【唯一のラム酒メーカーラオディ】

サトウキビ畑で井上さんと

 今日ご紹介するのはラム酒です。実はラオスには世界に誇るラム酒があります。世界で3%しか存在しないと言われている製法の「アグリコール製法」で作られてます。

 ラム酒の製造方法には原材料により3タイプあります。

  • 大多数の方法「トラディショナルラム」は、サトウキビのジュースから砂糖を製造した際に砂糖に結晶しないモラセス(廃糖蜜=つまり糖蜜)が残ります。それにはまだ糖成分が残っているので、それを使って発酵、蒸留して作ります。これが大手のラム酒メーカー(バガルディ、マイヤーズ、ハバナクラブ等)が製造している方法です。ラム酒のほぼ97%はこの方法で作られています。
  • 残りのおよそ3%がアグリコールラムで、かつてフランスの植民地を中心に採用されていた製法で、搾りたてのサトウキビジュースだけで作られます。

 新鮮なサトウキビのあるシーズンのみと製造期間が限定され、そして原材料費もモラセス(糖蜜)に比べとても高価になります。モラセス(糖蜜)にはないサトウキビの香りの豊かさが特徴で、高級ラムとして評価されています。

  • ハイエストモラセスラム製法はサトウキビのジュースを濃縮した液で黒糖を作り、溶かして発酵 蒸留します。これは新しいカテゴリーでまだ生産量は0.1%未満です。

 ラオディのラムは自社栽培の無農薬サトウキビを20ヘクタールの畑で栽培して使用しています。サトウキビが収穫できる11月から翌年の2月までの間で年1回ラム酒づくりは行われます。サトウキビの絞り汁にブレンドされたワイン酵母を入れて数日間発酵させ、単式蒸留器で蒸留します。ホワイトラムはステンレスタンクで、ブラウンラムはフランスから輸入したワイン樽とスコットランドやケンタッキーから輸入したバーボン樽で3年以上熟成させると、およそ42%のアルコール度数になります。

フランスやアメリカ等の醸造樽で3年ほど寝かすブラウンラム

 2020年ロンドンで開催された「国際ワイン・蒸留酒品評会」(IWSC)でラオディのSweetブラウンラムが金賞を獲得しました。この快挙にラオス政府は大喜びして、商工省大臣より表彰状が贈られました。ラオスの物産で世界的評価を受ける物品は今まで皆無だったので、喜びようが伝わってきます。私が工場に伺った時も政府高官が訪ねて来ていました。

 その他に「マリアージュラム」と呼ばれるリキュールは、ラオス産の果物(パッションフルーツ、プラム、ココナッツ、サトウキビ等)やコーヒーで6種類が作られています。

 日本の梅に似ているというチェンマイ産の梅で作られたリキュールを味見してみました。下戸の私でも梅酒に似て飲みやすかったです。なんだか癖になりそうです。アルコールは25%あるそうです。 

ラオディの9種類のラム酒

 ラオディを作っている会社はラオス人が経営していますが、技術指導は広島県福山市出身の井上育三さんが2006年の会社設立当初より担当しています。ご本人は素人が始めたと謙遜してらっしゃいますが、世界に認められるほどのクォーリティの高い製品を生み出すには相当の研究と努力の賜物だと思います。

 現在もどんなサトウキビが適しているのか10種類くらいのサトウキビを試験栽培しています。

 今後の構想をお聴きすると、「自分も高齢になってきたので、ラオス人でラム酒を製造できるように技術者を育てているが、ラム酒作りの他に、紙箱は日本へオーダーしているが、コストが高いので、サトウキビの搾りかすと木のチップを混ぜて卵のパッケージのようなパッキング材が作れないかと思案している」とのこと。当会IV-JAPANには木の専門家もいるので、近々ご紹介しようと話が進んでいます。「それが実現したら環境にも配慮した試みができると、将来はできるだけ地元のものを活用したい」とおっしゃってました。しかし、瓶のコルク栓のようにポルトガルへ注文しなければならないものもあり、100%地元産とは簡単にいかないようです。

ラオスの壺で醸造を試作中と

 コロナ過の中、ラオス政府からアルコールの提供を求められ、モラレス(廃糖蜜)から抽出したアルコール度数75%を消毒用エタノールとして、216リットル提供したそうです。

ビエンチャン郊外47キロ地点のナーソン村の工場を訪問してみてください(要予約)。全種類のラムが無料で試飲できるのと、「バーベキュー用のストーブもあるので、ピクニックのつもりで食料持参でいらしてください」とのことです。ラオスでは飲酒・喫煙は18歳以上からですので、ご注意ください。