ラオスの結婚式「伝統的な儀式」

理事の金野喜久子です。

 ラオスの結婚式は、「バーシー(正確には「バーシー・スー・クワン」)」という儀式と披露宴の2部構成になっています。何度かラオスを訪れているうちに、できれば、ラオスの結婚式に参列して直接体験してみたいと思うようになりました。幸い、一度だけですが、そのチャンスがありましたので、今回は、その儀式の紹介をさせて頂きます。

 「バーシーの儀式」について、簡単に説明しますと、ラオス人にとって宗教上(精霊信仰)の大切な習慣、儀式で、新年や結婚、出産のお祝い、歓迎、旅立ち、死別などの人生の節目に行う儀式です。ラオス人は魂と身体がしっかりと結びついているのが健康で幸せな状態であると考えていて、クワン(精霊)が体内から出ないように、出てしまったクワンを呼び戻すために、この儀式が行われます。

 私が、ご招待頂いた結婚式では、一日目は、「バーシーの儀式」、二日目は、大きな施設を借りての披露宴、盛大なパーティーが催されました。パーティーでは、民族衣装を纏った参列者の皆様も、踊ったり歌ったりして盛り上がり、結婚式を楽しんでいらっしゃるようでした。

 披露宴、パーティーに関しては、イメージできると考えますので、ここでは、一日目の「バーシーの儀式」のことについて紹介させて頂きます。「バーシーの儀式」は、新婦宅で行われます。その儀式のために、バナナの葉と花を使った「パー・クワン」という花飾りの置物と供え物である鶏、餅米、果物等が用意されます。また、家の前の庭は、臨時のパーティー会場のようになり、食事や音楽を楽しめるように設置されていました。

 いよいよ、イベントがスタートすると、ラオスの正装を身に付けた新郎が親族と共に、新婦家の自宅を目指して皆で音楽に合わせて手拍子を打ったりしながら行進します。新婦宅の前では、新婦親族が入り口をロープで遮断し、待ち構えて、そこで何度か新郎に良い夫になりますか、子どもをたくさん作りますか、お金持ちになって幸せにできますか、等々問答があり、ようやく新郎と親族は家の中に迎え入れられます。

 家の中では、伝統衣装で着飾った新婦が待っていて、その後、「パー・クワン」に糸を括り付けた置物を中心に新郎・新婦、祈祷師、親族が座り、祈祷師が祝詞のようなことを唱えながら、儀式を進めます。皆で魂を繋げるために、この「パー・クワン」の中央から出ている糸を握ります。糸に触れられない人は、糸を握っている人にそっと手を差し出し触れるようです。

 式の中で、(新郎新婦の初めての、二人での共同作業だと思いますが)半分にした、ゆで卵を新郎と新婦が互いに相手の口に入れるシーンがありました。これは、カットしたウエディングケーキの一切れを新郎新婦がお互いに食べさせ合う、そのことと同じような演出なのかなと思います。

 祈祷師のお祈りが終わると、参列者が順々にお祝いの言葉をかけながら糸(マット・ケーン)を新郎・新婦の手首に巻いていきます。花の入った銀の器にお金を結んだ手を添えている写真は、「親や祖母などに、今まで迷惑をかけたり、間違いごとを起こしたりしていたらお許しください〈新婦から伺いました〉」という意味があるそうです。

儀式が終わってから、きれいに飾られた寝室に「パー・クワン」を運んで、新郎新婦と希望者が、それぞれ一緒に記念写真を撮りました。また、家の前に庭で、参加者にお酒やラープなどのラオス料理が振る舞われます。エレキバンドが大きな音量で演奏している中で、ラオス料理を頂きながら、地域でお祝いするラオスの結婚式を充分楽しませて頂きました。

 「バーシーの儀式」を体験して、人と人の「つながり」、また、身体と魂の「つながり」について、ラオス人は重要視していることを知りました。私も、人生の節目を意識していなかったわけではありませんが、この節目の儀式を体験して、『つながり』について新たな視点で考える機会になりました。