日常の仕事に出てくる国際化 その3

監事の税理士の森本進です。新型コロナが蔓延して以来、海外に行く機会がまだありませんので、今回も税理士業務に係わる国際化について書かせて頂きます。

国際結婚がめずらしくなくなった今の時代、海外に永住している方からの税務相談が増えました。具体的には、①親が亡くなったことによる相続税の申告、②親から相続した不動産を賃貸したことによる不動産所得の申告、③その不動産を売却したことによる譲渡所得の申告などです。

今回は②、③について書かせて頂きます。まず②不動産所得についてですが、海外に永住していても、日本の不動産から得た家賃収入があれば、日本の所得税(国税)が課税されます。海外に住んでいても確定申告はしなければなりません。そのため、「納税管理人」の届出を税務署に提出する必要があります。「納税管理人」は、海外にいる方の代わりに、申告書の提出や税金の納付等の納税義務を果たす人のことです。海外に永住している人だけでなく、サラリーマンが1年以上の予定で海外支店に転勤する場合も、自宅を賃貸して家賃収入があれば同様に確定申告をする必要があるため、「納税管理人」の届出をしなければなりません。通常は、親族や申告を依頼している税理士が「納税管理人」になることが多いです。その「納税管理人」が海外にいる本人に代わって、毎年確定申告や所得税の納付をすることになります。

次に③不動産の売却についてです。親から相続した不動産を子供達が共有で相続し、その後売却したが、子供の一人が海外に永住しているケースなどです。その場合、海外にいる方も売却した不動産の確定申告をする必要があります。この場合も「納税管理人」の届出が必要なのは②と同じなのですが、注意は、要件(買主が法人の場合など)にあてはまれば、購入者が売却代金を支払う際に、海外在住者の分だけ、売却代金の10.21%が源泉徴収されるということです。また、源泉徴収されるだけでなく、その取引内容を記載した支払調査が買主から税務署に提出されることになっています。これらの制度は、海外在住者の申告漏れを防ぐためです。「納税管理人」は、確定申告をすることにより、源泉徴収された税金の精算をします。売却物件が譲渡損の場合には、全額が戻ってくることになります。

 ②、③に共通することですが、住民税については、海外に永住している人、1年以上の予定で海外支店に転勤しているサラリーマンは支払う必要はありません。住民税は、その年の1月1日に日本国内に住所がある場合に、前年中の所得に対して課税されます。具体的には、令和5年1月1日に日本に住所がない海外永住者、及び前記サラリーマンは、令和4年に所得があったとしても、令和5年度の住民税は課税されないことになります。

 今回は、海外に永住している方の確定申告、及びその手続きを代行する「納税管理人」について書かせていただきました。