伝えることの難しさ

皆様こんにちは。9月より前方さんの後任として日本事務局を担当することになりました、松本尚(たかし)と申します。よろしくお願いいたします。

NGOで働かせて頂くのは今回が初めてでして、就任してから早1か月が経ちましたが、バタバタとしているうちにあっという間に過ぎ去ってしまいました。

そんな私の拙い海外経験を雑文ながら今後小出しにして参りたいと思います。

青年海外協力隊として大洋州のソロモン諸島に2年、パプアニューギニアに2年半、JICAボランティア調整員としてアフリカのザンビアに約2年滞在しました。またバックパッカーとして今まで30か国以上を旅してきましたが、よく聞かれる質問に「一番良かった国は?」というものがあります。

そんな質問には「全部よかった」と答えることにしています。

実際そうですし、それよりも短い滞在でその国のことをあーだこーだと評価するのは、何だか失礼な気がするからです。

日本に何十年も住んでいても、未だ知らない日本の良さも悪さも沢山あるのはよく知るところです。

そしてことさら旅というものは、その時の環境によって印象が良くも悪くもなります。それはとても簡単な要因です。例えば、天気、季節、出会った人、食べた物、泊まった宿、乗り物、国の情勢、などなど…

すごく楽しかった国にもう一度行ってみたら、何だかあまり楽しくなかったなんてこともよくあることです。

それくらい私たちのいわゆる「印象」というものは曖昧で「無責任」なものなのです。それに加え、思い出は美化されてしまうものです。

少しくらい外国を訪れただけで、その国の文化や人たちについてやたらと得意げに吹聴する人がいますが、そういったことが「差別や偏見」の始まりだと思うのです。本人には悪気はないのでしょうが、だからこそ実に厄介です。

しかし、そういったことは旅だけではなく、社会全般の全ての事象に於いて言えることでしょう。

私達はどれだけ曖昧模糊とした中で無責任に生きていることでしょうか。。。

30歳を過ぎた頃から、私は旅先で写真を一切撮らなくなりました。何故か?それは、写真は真実を伝えないからです。それは言葉も同様ですが、物事というものは他者に伝わりにくい。特に旅は五感(あわよくば六感さえも)をフル活用して全身で感じ楽しむものです。それを写真というたった「視覚一感」で表現してしまうことに次第に違和感を覚えるようになったのです。それだけでもあまりにも不十分なのに、写真を見る側は更に自らの勝手な解釈を創り上げて理解したつもりになるのです。そして他者に吹聴し…

国際協力において一番大切なのは、事実を正しく伝えて正しく理解してもらうことであると思っています。

ですが、その現場を見たことのない人たちに現状を伝えることはとても難しい。

それでも「伝えることをあきらめてはいけない」と思っていることは確かです。

日本事務局 松本

P.S.隊員時代の写真を少しだけ…