全研修終了、そしてプロジェクト終了へ

ホスピタリティプロジェクトのプロジェクトマネージャーです。

 6月10日にホスピタリティ研修・介護研修第4期生(23名)の修了式を行いました。これで2019年3月から開始した日本NGO連携無償資金協力「地方の女性・青年の就業促進のためのホスピタリティ・介護職業訓練」事業(以下、H/C研修)で予定していた4回の研修、80名の研修生を達成し、あとはプロジェクト終了日の7月1までに購入した資機材のラオス側への譲渡手続き、研修マニュアルなどのとりまとめ、報告書の作成などの作業を残すだけとなりました。

 修了したばかりの4期生を除いて1~3期生57名の5月末時点の就業先を見るとホテル従業員1,家庭内介護1,レストラン従業員3,ハウスメイド4,小売店など家業手伝い8,店員7、オフィスや工場の従業員9,進学4,結婚して主婦3,待機中17となっており、主婦も学生も一つの進路とすると70%の者は研修後に何らかの進路が見いだせています。これは今までIV-Japanが支援してきた職業技能訓練(縫製、調理、理美容、木工)の就業平均値と同じです。待機中の者も家業の手伝い(多くは農業)をしながら新たな職を探しているところです。

 プロジェクトの目標であったホテル従業員の育成、という点は研修開始と同時期に新型コロナウィルスの世界的な流行となり、ラオスのホテルがほぼ全面的に閉鎖もしくは開店休業状態となる中、結果としては1名でした。それでも新型コロナウィルスによる外出規制やそれに伴う経済の落ち込みの中で関係者の御厚意により研修で得た知識や技能を活かして介護、ハウスメイドやレストラン従業員など何とか就業先を確保できました。例えば料理研修はどちらかというと研修の合間の息抜き的な意味合いが強かったのですが、日本料理を得意とするラオプラザホテルの厨房スタッフがコロッケの作り方を伝授し、ある研修生はそれをネットで販売するビジネスを始めました。また、2期生からは国立大学に進学1,法律学校への進学2(いずれも男子)がありましたが、この3人は家庭の事情で半ば進学を諦め、学校の先生の薦めで本職業訓練に参加したのですが、男子寮で同室となり互いに刺激し合って諦めていた進学を目指すこととなり、本スタッフが奨学金などの制度を紹介するなどにより希望を叶えることができました。別の女子(研修時は14歳でした)は、事情があって両親から叔母に預けられ、義務教育半ばで全寮制の本研修に参加しました。後から聞くと寮に着いた時、大泣きしていたそうです。両親、親族から離れ、周りは年齢的に20歳前後のお姉さんばかり。それは不安になるでしょう。県の教育局には今後は義務教育修了者のみを推薦するよう要請しつつも研修生として受け入れ、研修修了後は県の担当者の計らいで再び義務教育課程に戻りました。別の女子はワクチン接種の際に全く別の名前であることが判明。夕方に呼んで事情を聞いたところ本来参加するはずの者が直前になって妊娠していることが分かり、県の推薦を受けているしいい研修コースなので誰か身代わりに行けと上の人(村長なのか県の担当者なのかは明らかにしなかった)から言われて親戚の私が身代わりに来た、という話がありました。研修生の受け入れ担当スタッフにIDカードや家族証明書で本人確認はしなかったのかと聞くと、多くの研修生のIDカードや家族証明書の顔写真はそれを作成したときの写真なので成長期の、特に女性の顔写真による本人確認は難しい、それに親族なので顔が似ているから無理、とのこと。身代わりとなった者は反省しつつも研修で学んだことをこれからの人生に役立たせたい、と言っており成績や生活態度も上位だったこともあり既に作成していた身代わりの名前ではなく本人の名前に切り替えた修了証書を修了式前日に作成し直しました。

 このほかにもいろいろラオスらしい?ドタバタはありましたが、無事に研修が終了したのはひとえに関係者の方々によるご尽力の賜物と感謝しております。特にコロナ蔓延初期にホテルの代わりに研修生のインターンを受け入れてくれた竹若敬三日本大使(当時)と公邸関係者の皆様、書記官様、厳しい外出規制で客足が少ない中でもインターンを受け入れその中から何人かをスタッフとして採用していただいたレッドウッドホテル&レストランのオーナーとマネージャー、3~4期生のインターンを受け入れてくれたラオテル・ホテルの皆様にこの場をお借りして御礼申し上げます。また、現在は新たな職場で活躍されていますが、ラオプラザホテルの日本人マネージャーの松山様には新型コロナウィルスにより一時中断した研修を再開するに当たって研修講師の手配で大変お世話になりました。ありがとうございました。

 ラオスは6月から本格的に外国人観光客の受け入れを再開しました。このプロジェクトで研修を受けた者がホテルの再開に伴って従業員として就業し、本文をお読みの皆様がラオス訪問の際に温かくお迎えするスタッフとなっていることを夢想しております。