日常の仕事で出てくる国際化

監事の税理士の森本進です。新型コロナウィルスが発生してもう丸二年が経ち、この間真新しい出来事があまりないため、今回は私の専門に絡む税務に係わる国際化について書かせて頂きます。

日本の相続税は、基礎控除を超える方だけが申告する必要があります。現在の基礎控除は、「3,000万+600万×法定相続人の数」となっており、例えば、母が亡くなり、相続人が子二人だけの場合には、4,200万を超える財産を母が持っていれば、税務署に申告する必要があります。

相続税の申告をする場合、相続人が協力し合って申告作業を進めるのですが、ここ最近増えたのが、相続人(子)が海外にいるケースです。一番多いのは、やはりアメリカですが、それ以外にもインド、チリなどのケースがありました。相続税の申告は、亡くなってから10ヶ月以内にしなければなりません。子が海外在住者の場合も例外はなく、他の相続人と連携して、期限内に終わらせる必要があります。ここ数年、スカイプ等を利用して打ち合わせができるようになったため、だいぶスムーズに申告作業を進められるようになりました。

ただ、どうしても出てくる大変な作業が、遺産分割協議書の作成になります。この遺産分割協議書がなければ、相続税の申告ができないだけでなく、不動産の名義変更や銀行預金の払い戻しもすることできません。普通は、相続人が署名、実印を押印し、印鑑証明書を添付して完成させるのですが、海外在住で日本の住民登録を抹消している場合には、この印鑑証明書がありません。この印鑑証明書の代わりに必要になるのが、「サイン証明」です。遺産分割協議書の現物を現地の日本大使館や領事館に持参し、領事の面前で遺産分割協議書に署名して捺印を押します。この遺産分割協議書に領事作成のサイン証明書をくっつけその部分に領事の割り印をして、印鑑証明書の代わりとします。

大変なのは、大使館または領事館に行かなければならないことです。アメリカなど国土が大きな国になると、飛行機で行かなければならない相続人もいました。亡くなってから10ヶ月以内には、遺産分割協議書を作成し申告を完了させなければならいため、相続人が海外在住の場合には、より一層のスケジュール管理が必要となります。

この間、相続税申告に関して一点改善された点があります。それは、令和1年10月より、電子申告が可能となった点です。それ以前は、相続税の申告書についても、海外に郵送し、海外在住者の署名、押印、日本への返送が必要でしたが、それ以降は、税理士が海外在住者の了承を得れば、代理で電子申告をすることが出来るようになりました。

相続税に関して国際化の観点から記しましたが、「サイン証明」だけは、今でも大変な作業として残っています。これだけ国際化が進み、海外で活躍している日本人が増えている現状を考えると、何らかの対応が必要だと思っています。