ラオス中国鉄道の開通

 代表理事の冨永幸子です。 

 今まで世界中でこれほどラオスが注目を浴びたことはなかったし、今後もこれほどラオスが取り上げられることはもうないだろうと言われています。「ラオス中国鉄道」が2021年12月3日に開通しました。建設には15年かかりました。ラオスの首都ビエンチャンより、中国の雲南省昆明の1022キロが開通し、ラオス国内はビエンチャンから国境のボーテンまで422キロになり、世界遺産のルアンパバンも通ります。ラオスは国土の7割以上が山地ですので、なんと422キロの内半分近くの198キロがトンネルの中を走り、メコン川などの川にかけた橋が170カ所(62キロ)になります。旅客10駅と貨物20駅の併用の単線ですが、コロナ過で痛手を負った観光業は中国人旅行客に期待してますし、農産物の中国輸出などで、経済効果も大きいとみられています。

 今までラオスの鉄道はタイのノンカイからメコン川を渡ってビエンチャンのタナレンまでの約3.5キロの一駅区間しかありませんでした。ですから、陸の孤島のラオスは周辺国と繋がるため、今回の開通を政府はもとより人々にも大変な期待をもたらしています。

 新幹線並みのスマートなデザインの列車が時速125キロで走ります。この列車はランサン号と名付けられ(これは14世紀に誕生したランサン王国の名前で百万頭の象の意味です)、ラオス国旗の3色(赤、青、白)の色が使われています。列車は中国在来線のCR200J が使用されています。 

 開通式典は前日の建国記念日12月2日にオンラインで首都ビエンチャンと北京で同時開催され、ラオスのトンルン・シスリット大統領が「ラオス人民の長年の夢がかなった歴史的瞬間を祝います」とあいさつし、中国の習近平主席は「両国の繁栄をもたらす鉄道を今後は両国の富のため一緒に発展させましょう」とスピーチ。ビエンチャン駅では出発式に先立ち、パンカム・ビパバン首相が仏教行事の幸運のゴング(太鼓のような鐘)を9回打ち、僧侶13人が聖歌を唱え、電車に幸運と繁栄を願って聖水を振りかけ、政府要人を載せて列車が出発しました。まことにラオスらしい出発式です。昆明のシーサンパンナ駅でもラオスに向けて同時に列車が出発しました。

 運行が始まっておよそ2カ月近くになりますが、大混乱が続いています。運賃は飛行機に比べて安いし、バスに比べて早いし、電車はきれいで、静かで申し分ないのですが、チケット購入が難しくて乗りたくても乗れないといったところです。まずチケット購入は主要な6駅で1日前から1人3枚まで購入できます。ただ、駅は市内から遠く、ビエンチャン駅でも市内から15キロも離れていて、公共交通はありませんので、駅までのアクセスが難しいです。発売は午前9時から始まりますが、8時にはもうチケット購入の列が駅の外で並び始まります。毎日長蛇の列で2時間待ちでようやく購入できるようです。支払いは現金のみです。購入できない人も多くいて、翌日また並びます。目的地のホテルの変更もしないといけません。とても不便です。人々の不満が高まり、ようやく市内のタラートサオからビエンチャン駅までの公共バスサービスが始まりました。またチケットは3日前から購入できるようになりました。

 私のラオスの友人もルアンパバンへ鉄道を利用して行ったのですが、「帰路のチケットが買えなくて、ホテルを延泊しないといけなかったけど、車内は快適でトイレもきれいでとてもよかった」と言ってました。ちなみに車内販売はありません。旅行者にとって予約はできないし、不便ですね。電車に乗るのを皆控えてます。事故も起こらないか心配する人もいて、様子見が多いです。座席は1等席は56席、2等席は662席、バリアフリーが2席で合計720席あります。

 世界遺産のルアンパバンまでは2等席片道で198,000キップ(およそ2,000円)、所要時間2時間ですから、今までは陸路ではおよそ8時間かかったので、今後は鉄道利用が多くなるでしょうし、飛行機も片道11,700円(+サービスチャージ2,200円)ですのであまり利用されなくなるでしょう。それに昨年は高速道路が開通したので、ビエンチャン郊外の景勝地バンビエンは車で1時間で行けるので、鉄道利用と所要時間は変わりませんので、高速道路利用の人が増えました。

 電車を運行・経営している「ラオス中国鉄道会社」は全て中国主導で、駅員の指導、チケット販売、車内清掃など特訓して、幹部社員の教育は昆明で行ったようです。ラオス国立大学のドンドック・キャンパスの中に中国語を学ぶ孔子学院の開設を中国の大学が支援して、ラオス中国鉄道会社の社員は孔子学院で中国語を学び開通に備えました。これからは中国語ができれば就職に有利と見られて、現在学生の一番人気のコースになっています。

 私も好奇心からビエンチャン駅へ行ってみましたが、構内には自由に入れず、お手洗いも借りられませんでした。今後は利用者サービスがカギになるように思いました。

 鉄道建設費用は総額375億元(およそ7千億円)、これはラオス国内総生産(GDP)の3分の1に当たります。7割を中国が、3割がラオスの出資ですが、ラオスの3割はほとんどを中国輸出入銀行からの借り入れです。ラオスが返済できるのかが危惧されています。今後益々中国依存が増えるのではと心配する人は多いです。また、中国はラオスを足掛かりに、アセアン各国のタイ、マレーシア、シンガポールへと鉄道敷設と同時に一帯一路を目指し、また昆明はミャンマーに接しているので、昆明からミャンマー国内を通りインド洋に出る別ルートの鉄道建設も大いに視野に入れています。

 今後はますます中国との関係が深まることが予想されますが、中国語ブームのなか、ラオスはこの鉄道開設で経済も人々のライフスタイルもすごく変わってしまうんではないかと、心配するのは私だけではないでしょう。ラオスはいかに自立性を維持できるかでしょうか。

 鉄道建設費用は総額375億元(およそ7千億円)、これはラオス国内総生産(GDP)の3分の1に当たります。7割を中国が、3割がラオスの出資ですが、ラオスの3割はほとんどを中国輸出入銀行からの借り入れです。ラオスが返済できるのかが危惧されています。今後益々中国依存が増えるのではと心配する人は多いです。また、中国はラオスを足掛かりに、アセアン各国のタイ、マレーシア、シンガポールへと鉄道敷設と同時に一帯一路を目指し、また昆明はミャンマーに接しているので、昆明からミャンマー国内を通りインド洋に出る別ルートの鉄道建設も大いに視野に入れています。今後はますます中国との関係が深まることが予想されますが、中国語ブームのなか、ラオスはこの鉄道開設で経済も人々のライフスタイルもすごく変わってしまうんではないかと、心配するのは私だけではないでしょう。ラオスはいかに自立性を維持できるかでしょう。