ラオスのコロナ対策に日本人医師の活躍

 代表理事の冨永幸子です。

 国境閉鎖から一年となるラオスでは、今も国外からの定期航空便の運航はありませんが、臨時便として、月数回ビエンチャンと韓国のインチョンを結ぶ便、それにWFP=国連世界食糧計画の人道支援便が運航されています。今回私は、幸い国際協力NGOということで、WFP便に乗ることができました。

 そして2週間にわたるホテルでの隔離も終わり、3月14日にようやくビエンチャンの自宅に帰ることができました。隔離中はホテルの部屋からは一切出られず、朝夕の検温はドアー越しで、食事も交換シーツも外の廊下のテーブルに置いていきます。

 このような厳しい対策が功を奏してか、ラオス国内の新型コロナ感染者の数は、3月24日現在49人で、亡くなった方はいません。

 それもWHOラオス事務所の活躍のおかげかと思います。WHOラオス事務所には、世界各国から集まった60数名の医療関係者が勤務しておりますが、健康危機対策班チームリーダーの日本人女性医師をはじめ、新型コロナに関する仕事では、数十人の内、6人の日本人医療従事者が活動しています。43歳の医師、窪田祥吾(くぼた・しょうご)さんの活躍をご紹介したいと思います。

 窪田さんは、去年4月1日に始まった全国ロックダウン当初から、1か月半の間に、全国17全ての県の病院で院内感染予防と治療のトレーニングを行いました。その中では、「病院のスタッフの健康と安全」を守るための講義も行い、最初は感染を恐れていた受講者もこれで自信をつけたと聞きます。実際、トレーニング初日の朝と、最終日の夕方に行うシミュレーションでは、見違えるようにしっかりとした感染防御と治療が出来るようになったそうです。また窪田さんは、コロナ禍にあっても通常と同じく必要となる、妊婦の健診や、出産、小児健診、内科外来などなどの支援や、県や郡知事を巻き込んだ、保健セクターを越えた自治体の対策強化なども行っています。特に広報の大切さを重視し、正しい情報を伝え、簡単で分かり易いメッセージを村民に提供することを自治体に指導したそうです。

 窪田さんはラオ語もお出来になり、医療関係者との交流もスムースにでき、何よりラオスでお役に立ちたいという情熱が効果をもたらしていると思います。

 ラオスがうまく抑え込めている背景については、窪田さんの個人的見解として、3つのポイントを指摘なさっていました。

①まず、政府の対応が早く、共産党の指令系統も強いため、政府の決定事項が全国の隅々まで速やかに伝達されることがあるようです。例えば、昨年3月に初めての国内症例が出る前に観光ビザ発給を中止しましたし、10例に満たない間に全国的なロックダウンが決定されました。因みに窪田さんのチームは、ロックダウン初日から全国の病院を回りはじめましたが、県・郡境はもちろん、各村の入り口にも検問所が設けられ、何度も車を止められ、指揮系統の強さに感心した、ということです。

②人口密度が低いということです。ラオスは1キロ平方メートルあたりおよそ30人で、これは日本の10分の1以下です。

③国境や隔離施設などでの水際対策を強化し、症例が見つかれば、すぐにその地域全体をロックダウンするというやり方が功を奏しているのではないか、ということでした。例えば、今年1月に、北部で不法入国者の陽性例が出た時は、すぐにその郡全体がロックダウンされました。

 ワクチン接種は日本と同じく、まずは15万人の全国の医療従事者を、3月から4月にかけて実施する予定です。中国からワクチンの寄付がすでにあり、医療従事者に始まり、次に軍人、警察官、公務員や教師4万人以上が受けています。ユニセフが調達した48万個のワクチンも3月21日に最初のバッチがラオスに到着しました。その中には日本も協力したワクチン2億ドル(約220憶円)分が入っています。

 その一方で、物理的な距離をとることや、石鹸による手洗い、マスクの着用などの効果的な公衆衛生対策を奨励しているのは日本と同じです。

 実は2009年に、早稲田大学や三菱化学の寄付で、当会が南部チャンパサック県のノンビエン小学校を建設したときに、早稲田の学生さんたちがボランティアで「手洗い歌」を作詞・作曲して、小学生に広めました。今年、コロナ禍もあって、その復刻版を後輩の学生さんたちが作りました。11年も早稲田の学生さんたちの活動が続いているのは素晴らしいです。

「こんにちはチャンパサック。山は高く、チャンパーの花はきれい、チャンパサック大好き、手を洗いましょう、指の間も、手の平も、どこもかしこもしっかりと、、、ごはんや魚はおいしいし、父さん、母さん、先生ありがとう」と歌って、動作で手洗いの仕方をしています。そして、先生が1.食事を食べるとき、2、外から帰った時、3、トイレに行ったとき、4、犬や猫、家畜を触ったときに、手を洗いましょう。と話します。 こうした習慣がしっかり根付いて、一日も早くコロナが終息に向かっていって欲しいと願っております。

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