ラオスの職業訓練校ってどんな風に運営しているの?(2)

サバイディー!

インドではモンスーンの影響で大きな洪水が起こりたくさんの方が亡くなったようですね。心からご冥福をお祈りいたします。2011年にタイで大きな洪水があったとき、タイでは多くの日本企業が被害を受けました。
実はラオスでも南部地域は同じように洪水の被害を受けました。そのときちょうど南部に行っていたラオス人の友人の話によると、そんな洪水のときも地元のラオス人たちは非難するボートの上でカラオケをしていたとか。彼曰く「ラオス人はどんなときも楽しいことが好きなんだよ」何が起きてもあまり動じない、おおらかなのがラオス人ですが、ここまでくるとあっぱれです。心が強いのだなぁと思うと同時に、「こうでなければならない」という概念がないからなのか失うものが少ないのかなぁと思いました。「勝ち組」「負け組」という言葉が流布する日本とは、世界観や人生観が異なるのですね。

さて、前回の続きで、職業訓練校の運営についてご紹介します。

私たち職業訓練校では今年度に入り、プロジェクトのふたつめの目標である「職業訓練校(初級・中級・上級すべてのコース)のカリキュラムと教科書の開発」に着手しました。過去に作成した初級・中級コースの教科書の改訂も必要ですが、まずは上級コースの教科書づくりから取り組んでいます。

上級コースではOJT(On the Job Training=実地訓練)のほかに、以下の教科を教えていく予定です。
①接客応対・カスタマーサービス
②接客基礎英会話
③衛生管理
④スモールビジネスマネジメント
⑤調理上級コース(ベーカリー、中華料理、栄養管理他)
⑥美容上級コース(上級カット技術、ヘアセット、マッサージ他)
⑦縫製上級コース(刺繍、スモッキング他)

それぞれの教科で専門家の先生をラオス国内外から招聘し、まずはラオス人スタッフが学んでいます。
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マッサージの講義の様子

専門家の先生から学んだことを教科書に落とし込んでいかなければなりませんが、ラオスには基本的に体系立ててまとめられた教科書というものがほとんどありません。とくに職業訓練といった生きた技術の分野になればなおさらです。学校では先生が教えてくれた知識を必死にノートにとり、それが生徒たちの教科書となります。

私たちは専門家の先生から頂いたハンドアウトをもとに、知識を整理し、1冊の教科書にまとめていくという作業が必要です。
タイにはたくさんの本がありますので、お金のある人たちはタイ語の本を買って勉強しています。タイから専門家の先生を招いたときは、先生がタイ語の教科書を持ってきてくれました。タイ語の教科書は体系だてられており、参考にしやすいものでした。
すると、あるスタッフが「これをコピーすればいいじゃないか。そのほうが効率的だ。ラオスの技術短大にも教科書があるから、それもコピーすればいいじゃないか」と言い出しました。もちろん、タイ語の教科書にのっている情報は参考にしていかねばなりません。日本の専門学校の教科書も参考にします。
「なんでコピーするの?私たちの教科書やカリキュラムがタイの職業訓練校やラオスのほかの技術短大とまったく同じだったら、私たちの職業訓練校にくる必要はないじゃない。私たちはラオスにひとつしかない職業訓練校のカリキュラムをつくるのが目標なの。実践的・実用的で基礎教育を十分に受けられなかった人たちにも分かり易い教科書をつくるのが目標なの。」

そんなやりとりを何度も何度も繰り返しながら、皆でオリジナルの教科書づくりに励んでいます。

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テキスト作成に使用する写真を撮影するスタッフ

それにしても、ラオスには著作権といった概念はまだまだ浸透していないのが現状ですね。
どんな教科書になっていくのか楽しみです。
プロジェクトが終了する頃には教育省から正式に認可を得て、ラオス全土の職業訓練関連機関に配布される予定なので、専門家のアドバイスを受けながら内容の濃い教科書にしていきたいと思います。

OJTコーディネーター・須田